の、ある一日


登場人物
(基本的に二人しか出てこないので読むのが楽なはずです)

♂瀬川真也(せがわ しんや):ノンポリ大学生。20歳
♀瀬川 瀬菜(せがわ せな):真也の年の離れた妹。10歳
♀桂木 加奈子(かつらぎ かなこ):ノンポリではない大学生。真也の旧友。脇役。20歳



CHAPTER1「淀んだ空気、病人の匂い」


 ついこの間まで、秋のオレンジ色に染まっていた
街道の並木が乾いた灰色に変わりつつあった。

・・・もう冬になるのか。

真也は曇り空の下、見慣れた故郷の街道を車で家路についていた。
時間は、お昼の12時過ぎ。
ついさっきコンビニで買ったビーフシチュードーナツと
鳥皮のから揚げの事を思うとますます腹が減る。
これから、両親が留守で妹が学校に出ている
無人の実家でのびのびとした時間を過ごすのだ。

「これだから大学生はやめられないね・・・」

真也は、自堕落な青春を大いにエンジョイしていた。


 玄関の脇に居る愛犬のラブとたわむれつつ、
鍵を開けて入ろうとするが、玄関が開かない。

「あれぇ?閉めたはずなんだがな。ま、どうでもいいけど」


玄関を入ると、突き当たりにあるトイレから水音がして
妹の瀬菜がパジャマ姿で出てきた。

「あ・・・、おかえり」
「あれ?学校はどうしたんだ?」

パジャマ姿となんとなく精彩の無い動作から
察しはついたがとりあえず様子を訊ねる。

「うん・・・、ちょっと具合が悪くて」
「風邪でもひいたのか?」
「たぶん・・・」
「今行くから、部屋で休んでろよ」
「うん・・・」

瀬菜は、ピンクのパジャマのお腹をさすりながら
のろのろと自室に戻っていった。

「あ〜あ、せっかく一人で過ごせると思ったのに」

真也は、予想もしなかったプライベートタイムへの
侵入者の存在に少しがっかりした。


買い物袋を自室に放り込むと、真也は
庭の離れにある妹の部屋へ向かう。

コン コン

「ちわー、三河屋です」
「まにあってます・・・」

ごく当たり前の家族の会話を交わし、
真也は瀬菜の部屋へ入った。
ポプリの香りが漂う、よどんだ空気の中
瀬菜はベッドの上でぐったりと布団を被っていた。

「学校さぼって居眠りしてんな。不良小学生め」

真也が枕元で他愛の無いジョークを投げかけると
瀬菜は軽く微笑みながら、熱っぽい視線をこちらに向けた。

「なんかね・・・かぜっぽいの」

体調の報告をはじめる瀬菜は、息が荒い。

「どこが具合悪いんだ?」
「あのね・・・、ちょっと熱っぽくてフラフラするの」
「熱測った?」
「まだ・・・、それでね、めまいがしてきもちわるくて」
「吐き気がするのか?」
「うん・・・あのね、学校で1回、ゲーしちゃった」

この子が風邪の時は、たいがい吐き風邪なのだ。
真也にとっては予想通りの答えだった。

「今はどうだ?吐きたい?」
「今は平気だけど・・・、また吐くような気がする。
あとね、おなか壊してる・・・」

「うんちは出た?」
「うん、出たよ・・・げり、してるの・・・」

瀬菜は、もそもそと鼻先まで布団を被りつつ
自分の腹具合を報告した。

「下痢、ひどいのか?うんち、どんな感じだった?」
「ん・・・あのね、学校でした時はどろどろのうんちだったの。
うちに帰ってからした時はもっとゆるかった・・・」


ちょっとはにかみながらも、瀬菜は聞かれるまま正直に答えた。

真也は、水分補給のためにスポーツドリンクを用意し、
瀬菜の体温を測り、おでこに熱さましのシートを貼り、
ベッドの側に、新聞紙をしいた洗面器を用意した。

「気持ち悪くなったらここに吐いていいからな」
「うん・・・」
「具合悪かったり、洗面器に吐いたらお兄ちゃんを呼ぶように。
遠慮すんなよ、内線でも携帯でも何でもいいから」

「うん・・・」
「あと、下痢してて熱があるから、ちゃんと水分補給しろよ。
急に飲むとお腹に悪いから、ゆっくり飲むように」

「うん・・・」

ベッドの側におかれた洗面器が、まるで妹の病気を強烈に
アピールしているようで、痛々しいコントラストを醸している。

「お兄ちゃん、ごめんね」
「ん?」
「今日、お父ちゃんもお母ちゃんもいないのに、病気しちゃって。
でも、わたし、一人じゃどうしようもないから・・・」

「ああ、別にいいよ。気にすんなって。でも、お兄ちゃんは
お母ちゃんみたいに上手に世話はできないからな。こっちこそごめんな」

「ううん・・・じゅうぶんだと思うよ、上手だよ」
「ポカリ飲むか?」
「うん・・・」

ドリンクのボトルを手渡そうとするが、
瀬菜はぐったりと布団に潜ったまま
熱っぽい視線を真也の方へ向けている。

「ん、何?」
「起きれない・・・飲むのてつだって・・・」

出た、甘え癖が。

「そんなに熱無いだろ、ほら、上半身だけ起きて」
「起きれにゃい・・・」

真也が、意地でも一人で起き上がろうとしない瀬菜を抱き起こしてやると、
瀬菜は、ごっくごっく、と喉を鳴らして冷えたドリンクを飲み下し始めた。

「アホ、一気飲みすんな」

瀬菜のおでこに注意のデコピンが飛ぶ

「いてっ、だってのどかわいてたんだもん・・・」

ごろごろごろっ・・・びきゅるるるるっ・・・ごぴっ・・・
ピンクのパジャマに包まれた小さなお腹が鳴る。

「うにゃぁ・・・」
「ほら、言わんこっちゃない。ゆっくりたくさん飲めよ」
「うん・・・」
「何か、欲しいものはあるか?必要なものとか」
「欲しいもの・・・、200万ガソのケータイ買って・・・」
「それは必要無ぇ」


 真也は、瀬菜にリクエストされたジュースやヨーグルト、
スポーツドリンクの追加分など必要な物をスーパーで買い揃えた。

「ったく、11歳のガキが200万画素とは笑止だぜ・・・」

俺の携帯だって30万画素のしょっぱいカメラなのに・・・
と、画素数と関係無くデータの圧縮によって画像が荒れる
自らのカメラ付き携帯の不条理な仕様に思いを馳せていると、
スーパーの出口で不意に声をかけられた。

「やっほー、昼間っからブラブラ買い物?あいかわらず大学生は暇ねぇ」
「加奈子・・・って、おめーも同じ暇人じゃねーか」

同学年の大学生で、中学時代からの腐れ縁の加奈子だ。
しばらく見ないうちに身なりが垢抜けたな・・・。

「どうしたの?」
「いや〜、別に。一昨日戻ってたんだけど
今晩あたり、メールしようかと思ってたところでな」

「また、飲み会とかやるんでしょ?雅孝たちが連絡待ってるよ」
「ああ、もう一週間はいるからな、やっぱ一回は飲み会しないとな・・・」

数ヶ月ぶりの郷里の友人とのおしゃべりに花が咲く真也だった・・・。


 
「はぁ・・・はぁ・・・う・・・」

自分の熱で火照った、幾重にも重ねられた布団に
くるまったまま、瀬菜はさきほどから胸のむかつきをおぼえていた。

「き・・・もちわ・・・るいぃ・・・」

胸のむかつきは、間もなく吐き気へと変わり
血の気が引くような、ヒヤッとした感覚の中に落ちて行きそうになる。
熱でだるい上半身を懸命にもちあげ、
瀬菜はベッドの側におかれた洗面器を手に取る。

は・・・吐きたい・・・もう吐いちゃう・・・

出さなければ楽にならないが、
吐く瞬間の、お腹の中をしめあげるような苦痛が怖くて、
洗面器を膝の上に置いたまま、瀬菜は宙ぶらりんの状態になった。
口はかすかに開き、焦点のさだまらない眼は
意味も無く新聞紙の上をさまよっていた。

「吐く・・・よ・・・、・・・えっ・・・えっ・・・」

口をささやかに「お」の字にして
瀬菜は胃の上、胸のあたりに力を込めるが、
胃の中身は上がって来ない。
貧血のようなたまらない気持ち悪さに耐えられず、
早く出したい気持ちで、右手でお腹をぐいぐい揉んだ。

ごっぽっ・・・、ごぽごぽぐるるるっ・・・

お腹の中から、外にもはっきりと聞こえる
水っぽい有機的な音が響いた。
瀬菜が、また胸に力を入れようとしたその刹那

ごぼっ・・・がぁぽっ・・・
じゃあああぁぁっ・・・・!びしゃしゃしらっ・・・・!!

「−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っ!!・・・・」

水道管の詰まるような音と、液体が落ちる音。
「えっ」とも「うっ」とも声を出すことが出来ず、
真っ青な顔で、瀬菜は激しく吐き戻した。
小さくかれんな病人のいる、空気の淀んだ部屋に重たい水音が響く。
膝の上に置かれた洗面器の中に、
白く濁った茶色やら緑やら白やらが混じった、生臭い液体が
湯気をたてながら激しくぶちまけられ、洗面器に添えられた
瀬菜の手、布団の上、にも飛び散った。

「はぁ・・・はぁ・・・うええぇぇぇっ・・・・!!えっ・・・、げぇーーーっ!
げほっ・・・げほっ・・・」


まとまった量の嘔吐を終えると、瀬菜はお腹の中に残った
吐き気のもとを搾り出そうと、上へ上へと懸命に息んだ。
喉からは、人には絶対に聞かれたくない、みっともない声が飛び出し
嘔吐の時におこる生理現象として、
大粒の涙が、ぱたっぱたぱたっ、とパジャマの袖に落ちた。

「は・・・吐いちゃった・・・」

小さな肩を上下し、やっと呼吸できるようになった口からは
洗面器の中の生臭い吐寫物へ向かって、てろーん、と
さっきまで胃の粘膜だった透明の液体が垂れ落ちていた。

 

CHAPTER2へ続く。

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